露地裏骨董。 気になる商品がございましたら、「商品の問い合わせ」欄からご連絡ください。詳細説明、追加写真などをお送りします。 国分寺市本町2-25-15 ℡ 090-1400-7141 12:00〜20:00(日曜13:00〜19:00)
「アンドロギュノスの裔(ちすじ) 渡辺温作品集」(薔薇十字社)という本がありまして。
なんかすごい因縁の深い本なのです。
最初に買ったのは、1970年前後の初版。
その後人に貸して、返ってこなかった。
しかたがないので古本屋で買いなおした。
(これを二回繰り返した。)
また山田勇男さんに頼まれて、神田の古本屋で探しだして送ったりした。
だから何度も買うことになったけど、今はたしかにウチにあるはず。
(先日、初めてお会いしたチエちゃんという方に、あるよ、貸すよ、と約束したのだ。)
と思って探したら、外箱はあるけど中身がない!
いろいろな人にすすめて貸しまくってたので、最後に誰に貸したんだったか…。もう、この本を探し出す気力も経済力もない。(買いなおす度に、倍々で高くなっていたのです…。)
渡辺温は、「可哀そうな姉」 と 「兵隊の死」 が有名で、アンソロジーに入ってたりするけど、私が好きなのは、「父を失う話」。
父に誘われて、小さな男の子が港まで散歩にでかける。
歩いている途中に、父の姿かたちが少しずつ変わっていき、だんだん自分の知らないお父さんになっていく。
港につくころにはすっかり 「知らない男の人」 になってしまった。
そしてその男の人は船に乗って行ってしまい、男の子はひとり港に残される。
…という、短いお話です。
私のかいつまみ方が下手くそなのでうまく伝わらないと思うけれど、この男の子の、人生というものに感じる根源的な不安と心細さと寂しさみたいなものを感じて、読むたびにいつも泣きそうになるのでした。
というわけで、この本をお貸しした方、このブログが目に止まったら返してね。それとも、国書刊行会あたりで、いいかげん出版してください。
ついでに「新青年傑作選」もぜひ再発を。
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ありがとうございます。
調べたら(というか調べてもらったんですが)、ネットの青空文庫というのでかなり読めるそうですね。それをプリントすればいいんだな、と思ったのですが、でも温とか渡辺啓助とか久生十蘭とかはいつでも読みたい人が手に入るようにしといてもらいたいもんですね。
こんど、ゆっくり本のはなしでもしたいです。
怪奇探偵小説集はほかに何が入っているのかもきになるな。
こんど、ゆっくり本のはなしでもしたいです。
怪奇探偵小説集はほかに何が入っているのかもきになるな。