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2024年11月23日 (Sat)
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2016年02月11日 (Thu)
映画館を出るときは置き去りにされた感じで、日にちがたってからどんどんよくなって、そのうち大傑作だと思うような映画ってあるでしょ?
タル・ヴェーラ監督の「ニーチェの馬」は、そんな映画でした。
今はなんて見事な映画の中の映画だろう、と思っています。
この映画を撮ったネメシュ・ラースロー監督はタル・ヴェーラの助監督だったと後で知って、とても納得しました。
共通しているのは
最小限の説明。
セリフの少なさ。
予定調和じゃないラスト。
ラスト、というか、終わらない映画。

'44年のアウシュビッツ-ビルケナウ収容所での一人のユダヤ人捕虜の二日間を描いた映画です。
静かに描ききっています。
それ以上言いたくないな…

色々な解釈が出来る。
ユダヤ人の葬儀 (死生観) にこだわる男の話とか、
最初から○○だったとか、(私はこっちですね)
絶望を描いてるとか、
いや未来に希望を託している、とか。

そのわりきれなさがずっと、ずしんと重く尾を引いてる映画です。

で、日本映画ってこういう多重に解釈出来るとか、予定調和に終わらないのって苦手じゃないですか?





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2016年02月09日 (Tue)



●マーク・リボー・トリオ アット ザ ビレッジヴァンガード ('12)
●スピリチュアル ユニティ ('04)

ともにアイラーの「ベルズ」を演り、「スピリチュアル〜」の方は一曲を除き全部アイラー曲なのだが、ライブだからだろうか。'12年のほうがパワフル。
でも演奏はあまりひねりがなく「まんま」です。

不思議なんだけど、一聴して、それも最初のところで「あ、ジャズじゃないな」と思ったのはなんでだろう。
そしてたまたま同じ時期に聴いたD・ボウイの「★」のM・ジュリアナのドラムは、聴いた瞬間に「あ、いいジャズドラムだ」とわくわくしたのはなんでだろう。

演奏をしばらく聴いてから判断するならまだしも、最初の音でそう思っちゃうというのは、どうやら私はドラムでジャズか否かを判断してるらしい。
いや、だからどうだってことはないんですけど。

そして私は「ジャズ耳」で聴くか「そうじゃない耳」で聴くかを最初の音で切り替えてるみたいなのです。
こういう音楽は何というジャンルなのかわからないけど、リボーの表現力の幅広さはたいしたもんです。
「ビレヴァン」のほうはコルトレーンの「サンシップ」も演っていて、「スピリチュアル〜」のほうのオリジナル曲では「至上の愛」のフレーズが出る。
どんだけアイラーとコルトレーンが好きなんでしょ。
軽いというかチャラいというか、そんな感じのグループだけど、楽しいです。
あ、ヘンリー・グライムズ(b) を聴くなら「スピリチュアル〜」のほうです。



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2014年11月26日 (Wed)
最初に言っとくけど、 この映画への違和感は理系脳じゃないからじゃありません。
ノーラン映画、 最後に観たのが 「ダークナイトライジング」 のバカ男バットマン。
安っぽさのまるでない絵。
そうだこの人の絵にはキッチュ感というものがなく、 ゆえにダークナイトシリーズは違和感があり、 かといって 「インセプション」 の方向も苦手だった。 (「インソムニア」 は面白かったけどアル・パシーノの力か)
この映画、 画面が格調高い一流志向のくせにハリウッド的予定調和オチなのである。 (ハリウッド娯楽映画が嫌いかというとそんなことない)

スケールの大きい風景はたしかに楽しめる。
コンピュータロボットもHALのように人気者になりそうだ。
親子の情も胸に迫る。(この女の子、 超かわいくて上手い。 大人役は中谷美紀みたいになったけど)
国家ぐるみの嘘もいかにもありそうだ。
「未来からの暗号」 もなるほど。
で、 話の最後は、 土星コロニー、 ね…。

このモヤモヤはなんでしょう。
地球に住めなくなったんなら人類滅びればいいじゃないか。
種の保存の意味わかんない。
どこまで 「西部開拓者精神」 なんでしょうアメリカ。
そりゃ相対性理論カマしてブラックホールとくりゃ何でもやりたい放題でしょーよ (柄が悪くてゴメン)
悪人は滅び主人公は無傷で生還するわけよ。 ありえないったら。

自分にとってデザスター映画とはスケールに関係ないのだ。
スリルやサスペンスが日常の中にこそある(ヒッチコック)のと同じように、 デザスターも日常の中にある。
それに終始する映画のほうが絶望的気分にはしていただける。
たとえ画面的には貧弱でも 「渚にて」 のような映画が好きなのです。

この映画、自分的には 「大傑作!」 でも 「がっかり」 でもなく 「まあまあ」 だったので、 レビューが絶賛の嵐なのにはけっこう打ちのめされたりしてます。





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2014年11月04日 (Tue)
若干25歳のグザヴィエ・ドラン監督、 四作目の2013年作。
前作は観てないがフォローさせていただいている信頼する方の 「面白い」 だけで観に行ってきた。

いやもう、 面白いというか。 あてられたというか。
そのホットな気分が醒めないうちにメモ。 そういうメモはたぶんまとまらない …。

冒頭のトム (監督が主演) が農場に向かって車を走らせるシーンで流れる歌。 あ、 なんだっけこれ。 「風のささやき」? 懐かしい。
そうか。 …なにがそうかはわからないけど冒頭から把まれる。

農場への長い長い長い一本道。
それは 「隔離された監獄」 ということ。

トムは 「亡くなった恋人」 への喪失感と自罰感情のために (恋人の兄に脅されながらも) 自らそこに留まる。

あ、 書いてて虚しいなぁ。
ストーリーは過不足なく書ける気がするのだけど、 問題 (?) はそんなとこにないのだ。
トムや、 恋人の兄や、 その母の表情。 声。 姿勢。 動き。
曇り空。 農場の風景。 部屋の空気。 大事なのはそっちの方で。
だからこその快楽的な映画体験なのだ。

一つの解釈を強いることはしない。
小さくは 「十月のとうもろこし畑は危険」 と言う映画と言ってもいいし (それはない笑)、 大きくは兄は○○のメタファーで 「そんなのはもううんざりだ、 違う場所に行く」 と言ってる映画だと言ってもいい。
共依存の、 ホモセクシュアルの、 自分と他者との関係の、 近親相姦感情の、 親の抑圧の、 田舎の閉鎖性の映画だと言ってもいい。 
どれも間違っていない。

どういう答えを見つけたところで、 いつまでも繰り返し答えを更新しようとすることにはなる。





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2014年09月24日 (Wed)
これは昭和13年に書かれ即発禁になり、 戦後にやっと発行された小説。
読んだ版には伏せ字だった箇所に傍線がひいてある。じゃこの伏せ字本はいつ出たのかと不思議に思っていたら、 後書きにいきさつが書いてあった。
中央公論は最初伏せ字にして出版することにしたが、印刷のミスが多発し、 伏せ字のはずが生きていたりして、 それが内務省検閲課に発禁の口実を与えることになったらしい。
この本は最初出る予定だった 「正しい伏せ字」 に傍線を施して、 それごと当時の資料としたのだと思う。

発禁のみならず、 石川は出版社側の人間ともども 「安寧秩序を妨害した罪」 で起訴され禁固4年執行猶予3年の判決をうける。
彼は上海、 南京などを取材して (南京陥落の二ヶ月後) 戦闘の跡の悲惨を目撃したことから、 提灯行列などをして南京陥落を喜んでいる 「銃後の人々」 に警鐘を鳴らしたかったのだった。(公判で毅然とそう言ったので、 心証を悪くし判決に影響した。)

これは別に反戦小説ではない。 特に優れた小説とも思わない。
淡々と事実と兵士達の心を平行させて書いているだけである。
でも、 すごく腑に落ちたところがある。
南京到着間近のところで一人の中国人少女が日本兵を撃ち殺してしまう。 家に逃げ込んだ少女を追い、 その家にいた者を皆殺しにする。 逡巡してるとこっちが殺られる。

日中戦争下の中国には、 戦場も銃後もなかった。
生活する民衆の中から真の抗日軍を見分けることは困難なことだった。
中国兵が軍服を捨てて庶民の中に紛れ込むので、 ますます戦闘員と非戦闘員の区別がつかない。
それで自衛のため皆殺しにする。

「恐怖から発生する大量虐殺」 ということが、 すごく腑に落ちた。 虐殺するほうだって怖いのだ。
(犠牲者の数は関係ないです)

沖縄戦でもベトナム戦争でも同じ話を聞いた。 すべての地上戦に共通することかもしれない。
だからこれからの戦争でも、 なに一つかわらず繰り返されるのだろう。

歴史書なら 「○万の虐殺があった。」 という無機的な一行があるだけだが (そこに論争がおこるわけだが)、 部隊側の理由や兵士の心の動きから納得させられたのは文学の力というものだと思う。






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